必要以上にシエルに近づけない理由は、彼女の隣で目を光らせているグランツである。

 彼は表面上はにこやかにシエルを紹介したが、目はまったく笑っていなかった。

 自身がよく知る騎士団の男たちが、どれほど荒っぽく、女性に飢えていて、遠慮がないかを理解していたからだ。

 そして『シエルに指一本でも触れたら斬る』とグランツの顔に書いてあるのを読み取れない団員はいない。

「い、いつもグランツ様がお世話になって……おります」

 まだまだ他人に対する抵抗が強いシエルは、あるだけの勇気を振り絞って男たちに挨拶をする。