控えめなひと言ながらも、シエルがグランツに与えた影響は大きかった。

「俺が今、君をどんなふうに抱こうとしているか知らないから、そう言えるんだ」

 グランツはシエルの手を引き寄せると、指先を軽く甘噛みする。

「愛している。だから無理をさせても怒らないでくれ」

 愛されているのならなにを無理することがあるのだろうと、シエルは小首を傾げた。

「もちろんです。グランツ様を怒るはずありません」

「その言葉を信じるからな」

 シエルは知らないが、グランツはもう彼女に遠慮も手加減もするつもりがなかった。言葉だけでは伝えきれない愛情を、ひと晩かけて無垢な身体に刻む気でいる。

(ちょっと恥ずかしいけど、グランツ様なら怖くない)

 シエルもシエルでグランツに自分の想いを伝えたくて、触れるだけのかわいらしいキスを贈る。

 眠れない夜はまだ始まったばかりだった。