もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 ぴったりと寄り添い、やがてどちらからともなく唇を重ねる。

 久し振りのキスを受け入れたシエルの頬は、心の準備をしていたはずなのに赤くなった。

「せっかくお会いできたのに、グランツ様のお顔を見られなくなりそうです」

「それは困る。ミディイルも君に会うのを楽しみにしていたんだ」

 え、とシエルがグランツの横で草を食む馬を見上げた。

「ミディイルなのですか? だって、あの戦いで……」

「ああ、矢を受けて戦場で散ったはずだった。だが、ふらっと厩舎に帰ってきてな」

 優雅に尾を揺らすミディイルは元気そうだった。恐ろしい戦場を経験したにも関わらず、怪我の跡が見当たらない。