年が明け、例年よりも短い冬が終わった。

 春になると、人が寄り付かない煤の森にも小さな花が芽吹き出す。

 かつてはグランツと二十日間会えなくて泣いたシエルも、今は元気に過ごしていた。

 寂しくないわけではないが、彼が必ず迎えに来てくれるとわかっていたからである。

 そして煤の森で木苺が赤い実をつけ始めた頃、シエルは母親と同じくらい大きくなったミュンの背をブラシで梳いていた。

「またどこかで遊んできたのね?」

 やんちゃ娘だったミュンもずいぶん落ち着いたが、いまだに遊び好きなのは変わらない。どこで遊んできたのやら、黒い毛にはこの辺りで見かけない植物や花がくっついている。