もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 シエルが逃げ出す前に、グランツは彼女の後頭部に手を添えて口づけを落とした。

 そして不意打ちを受けて硬直したシエルの頬を指でくすぐり、唇を触れ合わせたまま話を続ける。

「この先は、君を妻に迎えてからにしよう。待っていてくれるか?」

 シエルはきゅっと唇を引き結ぶと、グランツの胸に顔を押し付けて小さくうなずいた。

「いつまででも待っています。……早くしないと、泣いてしまいますからね」

「俺が落ち着いてからでいいと言ったのは君だろうに。あまりかわいいわがままを言わないでくれ。今すぐ攫いたくなる」

 今度はシエルのほうから背伸びをし、グランツの唇をついばんだ。