もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 ぽつりと言ったシエルの口調が、普段よりも砕けている。

(こんなに特別なものだと思わなかった)

 男女の事情に疎かったシエルだが、さすがに唇へのキスには思うところがあり、真っ赤になる。

 シエルがそんな状態だからか、グランツは普段失くしがちな余裕を保つことができた。

「いつものように、もう一度してほしいと言ってくれないのか?」

 彼らしくないからかいのせいで、シエルの頬がますます赤く染まる。

「いっ、言えません……!」

「なぜ?」

「だって恥ずかしいじゃないですか……」

 人前で泣き顔を見せ、泉では素足を平然と晒したシエルが、はっきりと恥じらいを口にする。