もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「そのためにあんな恐ろしいことを……?」

 彼女は魔法でグランツのいた戦場を目にしている。

 人々の痛みも苦しみも、恐怖も嘆きも知っていたから、あれがたったひとりの子供じみた願いが引き起こしたとは信じられず、浅い呼吸を繰り返した。

「……なんて、ひどい」

「同感だ。……俺の仲間たちも、何人も失った」

「伝令はカセル騎士団がほぼ……壊滅状態にある、と」

 グランツはなにも言わなかった。シエルの肩に額を押し付け、ベッドシーツをきつく握りしめる。

 シエルはそっとグランツの肩に触れ、彼を抱きしめた。魔法での治療が済んだ後とはいえ、重い怪我を負っていた左腕を気遣いながら。