「攻撃するな! あれはグランツだ!」

 魔獣をともなって現れたグランツは、周囲の状況など気にせずまっすぐにシエルのもとへ向かった。

「シエル」

 かすれた声で最愛の人の名を呼んだグランツが、泣き叫ぶシエルに右腕を伸ばす。

「もう大丈夫だ」

「グランツ、さま……? 生きて……」

 両手で顔を覆っていたシエルが目を見開く。

 グランツは血と傷に覆われたまま、恋人を安心させるために微笑んだ。

「帰ってくると言っただろう?」

 シエルがひくりと喉を鳴らし、声を詰まらせる。

「グランツ様……グランツ様ぁ……」

「すまない。また君を悲しませてしまったな」