もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 悲痛な叫び声をあげたシエルは、自分の持つ魔力を制御できずに一気に解き放った。

 美しい石畳が割れ、地面に大きなひびが入る。地の底まで続くような穴が至るところに開き、その場にいた人々は半狂乱になって逃げだした。

「シエル、落ち着け!」

 アルドが兵士に逃げるよう促されながらも、深い悲しみと絶望に囚われたシエルに手を差し伸べようとする。

 しかしシエルにはなにも届かなかった。

(間に合わなかった。私に力がなかったから、あの人を守れなかった……!)

 あふれ出した魔力は、何者もシエルに近づかせまいと彼女の周囲に蔦を生み出す。大地を裂きながら伸びた蔦は、大樹の根のようにも見えた。