もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 不安を煽るような暗雲にひと筋の光が差し込み、シエルを照らし出す。霧のような雨が降り注ぎ、彼女の足もとについた火を穏やかに消していった。

 起こりえるはずのない超自然的な現象を目の当たりにした人々が、戸惑いの声をあげる。

「ねえ、あれ……」

 すさまじい形相でシエルに呪いの言葉を吐いていた若い女が、〝魔女〟を捕らえた茨に向かって指をさした。

 火が消えた茨に白い花が咲いている。

 小さな純白の花はぽつぽつと花弁を広げ、シエルの足もとに花畑を作った。彼女の手足を縛る茨にも同じ花が咲き乱れ、いくつかが風に揺られて辺りに花びらを散らす。

「どういうことなんだ……?」