もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「すまん、感謝する」

 返り血を浴びてなお美しくやわらかな黒い毛並みを頬に感じると、グランツの脳裏にシエルと過ごした穏やかな日々がよぎる。

「お前が来てくれるとは思わなかったな。シエルはどうした?」

 イルシャに話しかけるのとほぼ同時に、土煙をあげながら騎馬兵が集う。

 一瞬、敵の増援かと気を引き締めたグランツだったが、兵たちを率いる男に気づいてふっと頬を緩めた。

「団長!」

 必死の形相で馬を走らせるトーレイに向かって、グランツは苦笑しながらつぶやく。

「タスローで迎え撃てと言っただろうが」