もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

(こんなことなら、強がらずにキスをしておけばよかったな)

 刻一刻と終わりが近づくのを感じながらも、グランツの瞳に宿った炎はいまだ消える気配がない。

「くっ……うああああ!」

 極限の緊張と恐怖に晒され、耐えられなかった若い騎士がグランツに向かって斬りかかる。

 グランツは重心を落とし、普段より重く感じる長剣を横向きに振るった。

遠心力を利用して勢いをつけるも、剣先はわずかに届かず、騎士の鎧の表面を掻く。

耳障りな金属音が響いた。

騎士の剣がグランツの命を狩ろうとした瞬間──。

「ま、魔獣だ!」