もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 なかなか前に出られないのも無理はない。彼らはたったひとりの男が、仲間たちを蹂躙し、物言わぬ骸に変えたところを目の前で見ている。

 ふ、とグランツが笑った。

 恋人に見せるものとは違う、獰猛な獣の笑みだった。

 血色の瞳が暗い色をはらみ、味方の背後で騒ぐばかりのオシュテルを捉える。

「俺を殺したいのなら、お前自身が来ればいい。左腕も失った男に、なにをそう臆することがある?」

 グランツが言う通り、彼の左腕は不自然に力を失って垂れ下がっていた。

 矢の雨を浴びたミディイルが横転した際に折ったせいだ。さらにグランツの肩には矢が突き刺さっており、呼吸がひどく荒い。