もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 愛馬のミディイルを失い、退路を断たれ、完全に孤立したグランツだ。

 仲間を、国を、そして大切な恋人を守るには、援軍が到着するまでタスローを守らねばならない。その時間を稼ぐためには、他国にも名が知れたグランツが敵を引き付ける必要があった。

「相手はたったひとりだ! さっさとやれ!」

 鎧を身にまとい、味方に囲まれ安全な場所にいても、オシュテルの震えは止まらない。

 ――なぜ、まだ生きている?

 際限なく恐怖を煽る疑問を抱いているのは、オシュテルだけではなかった。

 命令を受けた騎士たちが、互いの顔を見合わせて誰が先陣を切るかとうかがっている。