もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 ミュンの背中に揺られながら、シエルは強く願った。



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 オシュテル男爵は震えていた。

 甘言に乗り、誘われるがまま従って、隣国ワレスの軍をケベク砦に引き込んだまではいい。

 自らの手勢は二千。その背後には二万の軍が控えているのだから、たった五千にしかならないカセル騎士団など、赤子の手をひねるがごとく潰せるはずだった。

 しかし今、砦の前は地獄絵図と化している。

 染めたのかと思われるほど地面が赤黒く変色した中、屍の山があった。

 つい先ほどまで、敵の大将の首級をあげようと鬨の声をあげていた騎士たちは、仲間たちの屍を積み上げた黒い騎士に手も足も出ないでいる。