もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 シエルが立ち上がったはずみに、木桶の水がこぼれる。

「書状が偽造されたと言っていたわ。アルド殿下は知っているのかしら? もしご存じないなら、伝えないと。オシュテル卿が寝返ったことも含めて」

 荷物は必要なかった。シエルはミュンを引き連れ、いつもグランツがやってくる道を駆けだす。

 不意にシエルの隣で子魔獣の身体が溶けた。

正確には溶けるように不定形になり、まばたきする間に母親よりもひと周りほど小さな姿まで成長した。

 そしていくぶん低くなった鳴き声で、自分の背にのるようシエルを促す。

「ありがとう、ミュン」