もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 イルシャは知性を湛えた青い瞳でシエルを見つめると、無力感に苛まれる彼女の頬を鼻でつついた。

 ぐるる、と喉を鳴らしたイルシャに応え、ミュンがぴょこんと跳ねる。

イルシャはシエルに額を押し付けてから、すぐに背を向けて風のように走り出した。

「イルシャ!?」

 シエルの呼びかけにも答えず、あっという間に姿が見えなくなる。

 残されたミュンがシエルの手を甘噛みし、その場に座った。きりりとした顔つきは、いつものいたずら好きで遊びたがりのミュンのものではない。

「……私も動かなきゃ」

 イルシャはシエルの叫びに応えて、グランツを助けるために戦場へ向かったのだ。