もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 イルシャを抱きしめながら、グランツの助けになるような魔法を何度も想像し、心の中で願うも、まったく叶った実感がない。ラベーラに言われて雨を降らせたこともあったのに、水の一滴も落とせないのだ。

(必要な時に、必要な魔法も使えない私のどこが聖女なの!)

 今までシエルは両親やラベーラに願われることで、大きな魔法を使ってきた。同じだけの力を発現させなければならないのに、焦りが募るばかりで思う通りにならない。

「どんな魔法でもいいから、お願いよ……!」

 激しい絶望を宿した叫びが、煤の森にむなしくこだまする。