もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 息をすることさえ忘れた敵軍は、目の前の男が何者なのかを知って気を奮い立たせた。

『カセル騎士団のノイフェルト卿か!』

『奴の首を取れば俺たちの勝ちだ!』

 わっと敵の騎士たちが向かうのを見て、シエルは今度こそ水面から目をそらした。

「イルシャ」

 シエルが泣きそうな顔で、映像を覗き込んでいた魔獣を抱きしめる。

「グランツ様を助けて」

 シエルの精神状態が不安定になったからか、水面の映像が途切れてもとの水に戻った。

「どうすればいいのかわからないの! あの人を助けなきゃいけないのに……!」