もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

『なにを馬鹿な! いくらあんたでも無理に決まってます! 万が一、団長の身になにかあったら……!』

『そのためにお前がいるんだ。──行くぞ、ミディイル』

 グランツに応え、ミディイルがいなないた。

『団長!』

 ワレスの旗を掲げた敵の一団が近づくのを見るなり、グランツはまっすぐ愛馬を走らせる。

 再び目を閉じそうになったシエルだが、その前にグランツの長剣が向かってきた敵のひとりの首をはねた。

『お、おい、まさかあれは……』

 圧倒的優位に立っているはずなのに、敵は黒馬を駆るたったひとりの男の前で勢いを殺し、その場に足を止めてしまった。

『名乗りは必要なかろう。来い』