もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 ほろ苦い笑みを浮かべたグランツのもとに、顔に生々しい傷を作った騎士がやってくる。

『団長、ヘッセン隊との連絡が途絶えました。これで俺たちは、完全に孤立したってわけです』

『なんだと』

『敵が身内にいたんじゃ、動きも筒抜けだ。オシュテルがうまいことやったんでしょう。……どうします?』

 裏切り者の名を聞くなり、グランツの顔にはっきりと怒りが浮かぶ。

 水鏡を介したシエルでさえ、燃えるような激しい怒りを感じて震え上がった。

『殺してやる』

 短いたったひと言にグランツの感情のすべてがこもっていた。

 シエルは今までに彼のそんな表情を見たことがなかった。