もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 砦と思わしき建物の前で、グランツは見覚えのある男と話していた。以前、シエルを王城へ連れて行ったカセル騎士団の副団長、トーレイだ。

 先ほどのひとりで戦闘にひと区切りついたのか、辺りは不気味なほど静かである。

『アルド殿下の書状はやはり偽造したものだったのでしょうな。しかしどうやってあれほど精巧なものを……』

『考えるだけ無駄だ。今はひとりでも多く殺せ。俺たちが生きて帰るために』

『なにがなんでも死ねませんよ。団長の結婚式にも出なきゃなりませんしね。あ、酒は一級品で頼みます』

『……お前の軽口に笑う日が来るとはな』