もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 ただごとではないと察し、周囲にいた騎士たちも集まってくる。

 駆けてきた騎士は必死に呼吸を整えながら、悲鳴のような声で叫んだ。

「ケベク砦が落ちました……!」



* * *



 グランツと別れた翌日、シエルは雲に覆われて暗くなった空を見つめ、ミュンを撫でていた。イルシャもそばに寄り添い、彼女の不安を紛らわせようとする。

「なんだかとても嫌な予感がするの」

 イルシャがシエルを見て、頭を伏せた。

「……私にできることはあるのかしら」

 シエルは立ち上がると、家の中から木桶を引っ張り出した。手のひらから魔法で水を出し、桶の中を満たしていく。