もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「こんなところにいたのね」

 鈴を転がしたようなラベーラの声は、ここまで走ってきたのか、息が切れて少し荒くなっている。

 たった今まで辺りを包み込んでいた甘い空気は、夜風にさらわれて消えてしまった。

「お加減が優れないとのことでしたが、もう具合はよろしいのですか」

 グランツがあくまで臣下としてラベーラに話しかける。

 しかし彼女の瞳に映っているのはシエルだけだった。

「よかったわ、私の大事な親友が生きていてくれて」

 ラベーラはグランツを無視してシエルに話しかける。

「どうしてこんな場所にいるの? あなたの正体を知られたら、きっと恐ろしいことになるわ。だから帰りましょう?」