もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「それだけでよろしいのでしたら……」

 ラベーラが頭を垂れたグランツの前に立った時、シエルはかつてラベーラに乞われて使った魔法を発現させた。

 グランツの周囲にやわらかな光が生まれる。光はふわふわと宙を舞って、広間の人々のもとに降り注いだ。

 特に効果のある魔法ではない。これはただ、『聖女は特別な存在だ』と思わせるためだけの魔法(パフォーマンス)だ。

「まあ……これは……」

「セニルースの式典でも見たことがありますよ。聖女の祝福です……!」

 間近で奇跡を目にした招待客がどよめくも、ラベーラの表情は信じられないものを見たように強張っていた。