もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 シエルは肩を震わせ、途切れ途切れに言う。

「ご無事でよかったです……ずっとお会いしたかった……」

「私も会いたかった。だが……なんというか、場所があまりよくない」

 グランツの指がシエルの目じりを滑り、とめどなくあふれる涙を拭った。

 見知らぬメイドたちに触れられるのを怖がり、アルドのことも拒んだシエルが、甘えるように指を追いかける。

「ほら、泣きやむんだ」

「が……頑張ります……」

 シエルは名残惜しげにグランツの背から腕を引くと、自分の顔を手で覆ってしゃくりあげた。

「もう少し胸を貸したい気持ちはあるのだが、殿下の視線がうるさくてな」