もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「どういう状況かまったくわからないのだが、少し落ち着いてほしい。その、そこで殿下が見ているから……」

 グランツは彼女の細い肩を掴むかどうか思案し、対応に困って手をさまよわせた。

 それを、アルドが離れた位置でにやにやしながら眺める。

「へえ?」

「そっ、そんな顔で見るな! ──シエル、頼むから一回離れてくれ。これでは貴女の顔を満足に見ることもできないだろう?」

 ひく、とシエルは喉を鳴らして顔を上げた。

 せっかくメイドたちがきれいに磨き上げたのに、目もとは赤くなっているし、グランツの胸に顔を押し付けたせいで頬に擦れた跡が付いている。

「あなたに、なにかあったのかと思って」