もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「その先は俺が聞くと怒られそうだ」

 シエルを制したアルドが、テーブルの隅に置いてあった手巾(ハンカチ)を差し出す。

「君が俺にも魔法をかけていて、騙すために演技をしているのだとしたら大したものだ」

 シエルがなかなか受け取らないのを見かね、アルドは彼女の頬を拭ってやろうとしたが、他人に触れられることを嫌ったシエルはわずかに身を引いた。

 アルドは無理にシエルの涙を拭おうとせず、なるべく彼女を刺激しないよう静かに尋ねる。

「グランツに会いたいか?」

 シエルは悲しそうな顔をしたまま、声にならない嗚咽を漏らしながら深く深くうなずいた。