もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 促されても、シエルはすぐに動けなかった。

 アルドのまっすぐな視線が彼女を捉え、探るように揺らめく。

「俺の知るグランツは数えきれないほどの命を屠った男だ。戦場では誰ひとり寄せ付けず、味方ですら震え上がらせる」

「……私の知るグランツ様はとても優しい方です」

 シエルの瞳からほろりと涙がこぼれ、さすがのアルドもぎょっとした。

「グランツ様はご無事ですか? 怪我をされているのでしょうか……?」

 涙を拭いながら言うシエルの顔を、アルドが少し気まずそうに、しかしおもしろがっている様子で覗き込む。

「グランツが心配なんだな」

「はい」

「……君がやらせたんじゃないのか?」