もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 グランツはシエルにたくさんの幸せな感情を教えたが、同時に身が引き裂かれるような寂しさと切なさ、苦しみと悲しみも残していったのだと知る。

 ひとりぼっちですすり泣くシエルを、イルシャが心配そうに何度も舐めた。

 月が少しずつ中天に上がり、おどろおどろしい煤の森を照らし出す。

 ついにへたりこんでしまったシエルの耳に、ふと土を踏む音が届いた。

 はっと音のほうに目を向けた彼女だったが、現れたのは望む人ではない。

「あんたが魔女だな」

 軽装に身を包んだ男は、月を背に馬上からシエルを見下ろす。