もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 それでも彼女の涙は止まらず、顎を伝って落ちていく。

「グランツ様に会いたい……」

 また、はにかみながら優しい声で『シエル』と呼んでほしいし、緊張した様子でぎこちなく手を握ってほしい。

赤くなって照れている顔、穏やかな眼差し、そして心地のいい低い声も。シエルの中から消えるどころか、胸の奥で今まで以上にあざやかに──彼への愛おしさを訴える。

 ひくりと喉を鳴らしたシエルが、顔を上げた。

 以前、グランツとした話を思い出したからだった。

『好きというのは、どういう気持ちなのでしょう。私もグランツ様を好きになりたいです』

『いつか貴女もその瞬間が来ればわかるはずだ。私がそうだった』