もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 ぐるう、と喉を鳴らす声が聞こえ、イルシャが彼女の脇の下に鼻先を突っ込む。

 ミュンは家で寝ており、ここにはいなかった。

「今日も来ないのかしら……」

 イルシャのやわらかな背を撫でながら、いつの間にか聞き慣れた馬のひづめの音を求めてつぶやく。

「もう二十日もいらっしゃらない。なにかあったのでなければいいけど」

 最後にグランツが来てから、もうそんなにも時間が経っている。これといった連絡もなく、シエルは連日彼の訪れを待っていた。

 イルシャがシエルの手に顔をこすりつける。