もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 指へのキスを思いのほか気に入ったシエルは、あれ以来、わざわざ目の前で手をきれいに洗ってからグランツに差し出すようになった。

 キスを好んでいるというよりは、グランツに触れられることを喜んでいるらしく、手を握るだけでもうれしそうな顔をする。

 以前の彼女では考えられない穏やかな笑みは、グランツの理性を狂おしいほど揺さぶったが、そこで無体な真似を強いるほど彼は誘惑に弱い男ではなかった。甘すぎる誘いを振り切るのは、戦場で百人を同時に相手するよりも難しいと思っているのは置いておくとして。

(……次に会う時は、また彼女の好きなものを用意しよう)