もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 牢を出るまで、どのぐらいかかるかはわからないが、少なくとも今日明日の話ではない。となると、シエルはグランツの身になにが起きたのかを知らないまま、あの寂しい森で待ち続けることになる。

(ようやく最近慣れてきてくれたのに、とんだ災難だ)

 夏の日、間違いなくふたりの距離は縮まった。

 シエルはこれまで以上に笑顔を見せるようになり、グランツにくっつきたがり、そして──。

『先日のキスをもう一度していただきたいのです』

 無邪気で甘やかな声を思い出し、グランツは額に手を当ててうつむく。

(ここにいれば嫌でも頭が冷える。むしろ投獄されてよかったのかもしれない)