もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 その時の羞恥と怒りを思い出したラベーラは、顔をゆがめて品のない舌打ちを漏らした。

 彼女の爪を染めていたメイドが、びくりと肩を震わせる。

 あらぬ噂を立てられてなにが悪いというのだ。美しい聖女と噂になるのなら、むしろ光栄だと喜ぶところだろう──。

 だからラベーラは自尊心をひどく傷つけたグランツを嫌い、憎んでいる。

 聖女の名を貶めた〝あの女〟もまた同じだ。

「ラベーラ様、足の爪も染めてよろしいですか?」

 メイドのひとりが恐る恐る話しかけると、ラベーラはふんと鼻を鳴らして靴を履いたままの足を差し出す。