もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

(私の力はなんのためにあるの? 大切な人たちが傷ついてからしか、使えないもの?)

 ラベーラのもとにいた時、苦しむ人々の姿を何度も見た。

 両親と家を奪われて呆然と立ち尽くす子供や、こと切れた恋人から離れようとしない男性。獣に裂かれた腹を押さえ、生まれるはずだった子供の名を叫んで絶命する女性もいたし、たった一滴の水を求めて乾いた井戸に身を投げる老人の姿もあった。

(ああなってからでは遅いのよ)

 二体の猿を相手するグランツに、別の一体が隙の生じた身体を貫くため爪を突き立てようとした。

 その瞬間、ミュンを抱いていたシエルの中でカッと大きな力が破裂する。