もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 はっとして顔を上げたシエルは、そこに別の猿の影を見た。

「イルシャ!」

 敵の仲間らしき猿がイルシャの隙を捉えて顔を引っかくのと、シエルが悲鳴をあげるのはほぼ同時だった。

 グランツは猿を力任せに弾くと、次々に現れ始めた敵を睨みつける。いつの間にか十を超える敵が彼らを囲んでいた。

「はっ!」

「グギィッ!」

 素早く逃げ回り、攻撃の隙をうかがう猿がグランツの剣に胸を裂かれ、耳障りな叫び声を響かせる。

美しかった泉に血しぶきが散り、清らかな水が赤く汚れた。