もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 目の前でグランツが長剣を抜き、鞘を地面に捨てる。まったく隙を感じさせない背中は、守るべきシエルと、いまだ姿を見せない敵に全神経を集中させていた。

(煤の森が危険だと忘れていたわ。いつもイルシャが魔獣を近づかせなかったし、グランツ様もいてくれたから)

 腕の中で震える子魔獣をぎゅっと抱きしめ、息をするのも忘れて敵の出方を待つ。

 やがて再びがさがさと樹上の葉が揺れたかと思うと、地面に小さな影が降り立った。

「ギイイイッ!」

 見た目は猿のようだが、蛇の尾が背中で揺れている。ぞっとするほど青い顔には、黄色い目がらんらんと輝いていた。