もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 心の奥のやわらかい部分を明かしたからか、グランツの声はいつもより小さい。

(そんなふうに思っていたの……)

 なにも知らず、なぜ触れてくれないのだろうと思っていたことを恥じる。

(私、グランツ様のことをまだちゃんと知らないのね。もうずいぶんと長く過ごした気がするのに)

 シエルは握ったままのグランツのこぶしをそっと手で包み込んだ。

 その感触に驚いたグランツが目を丸くするも、シエルは目を伏せて言う。

「でも私は、グランツ様の手が好きです。いろんなことができる素敵な手だと思います」

「他者を傷つけてばかりの手だ」

「私はあなたの手に一度も傷つけられていません」