もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 ラベーラはセニルース王国の王女であり、同時に聖女とも呼ばれている。国に恵みを与え、他国の脅威を退ける神の御業は、城の奥に囚われた〝影〟のものではなく、ラベーラのものとされていたからだ。

「つまらない質問なんてしないで。早く助けてあげて」

 親友のお願いを、彼女はかれこれ十年聞き続けている。

 今日もまた、自身の内に眠る魔力を巡らせ、苦しみに嘆く人々のために魔法を使った。

 地図の上に右手をかざすと、手のひらからすうっと魔力が抜けていく。

 城の中からではなにが起きたかわからないが、今頃、干ばつに喘いでいた南部ではひと月振りの恵みの雨が降り注いでいるはずだった。