もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

(本当に大きい手……。どうしていつも私に触れてくださらないのかしら。さっき、イルシャの背を降りる時に触れてくださってうれしかったのに)

 長年、剣を握った手は武骨で硬い。それがまた物珍しく映って、シエルは楽しそうにグランツの手を触った。

 もしも彼女が手ではなく彼本人を見ていれば、ひどく緊張しているのがわかっただろう。

「こんなものに触れて楽しいか……?」

「はい、とても。自分以外の手には触れたことがないので、新鮮です」

「……ああ、そういう。どうして最近、私に触れたがるのかわからなかったが、そういう理由からか。ようやく他人に興味を持つところまで来たということなのだな」