もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「手を……? そ、そうだな」

 どんな戦場でもうろたえずに団員を鼓舞してきた男が、まさかひとりの女性にここまで動揺しているとは、誰も思わないだろう。

 グランツは自分の手に視線を落としてから、妙にぎこちなくシエルへと差し出した。

「ありがとうございます」

 シエルがグランツの手を取って、そろりとイルシャの背から降りようとする。

 しかしもう少しで地面に足がつくその瞬間、おとなしくしていたイルシャが突然身体を揺らした。

「きゃっ」

 体勢を崩したシエルが、勢いよくグランツのほうへ転がり込む。

 咄嗟に抱きとめられたおかげで、彼女は怪我をせずに済んだ。

「びっくりしました……」