もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 熱がこもったふかふかの毛並みを軽く掴み、シエルが背後を振り返る。ミディイルに騎乗したグランツが追ってくるのを見て、ほっと肩の力を抜いた。

(なにごとかと思ったけど、グランツ様がいてくださるなら大丈夫)

 すっかりグランツを信用しきったシエルは、追いかけてくる姿に向かって軽く手を振った。



 シエルを乗せたイルシャは、しばらくして美しい泉のほとりで立ち止まった。

 薄暗い煤の森には似つかわしくない、どこか神聖な雰囲気を漂わせる清らかな水辺だった。あまり広くはないが、その代わりに中心部が深くなっているようだ。