もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「どうかしたの?」

 魔獣との間に言葉はないものの、簡単な意思疎通であればできる。主にものを運んだり、移動したりといった時に、イルシャのほうで察知して動く程度だが。

 シエルが魔法の水を止めてイルシャの鼻に手を伸ばす。

 その瞬間、イルシャの大きな口がぐわっと開いた。

「え──」

「シエル!」

 立ち尽くすシエルと違い、多くの戦場を経験したグランツは動くのが早かった。素早く彼女の身体を抱き寄せ、イルシャに向かって鞘がついたままの剣を打ち込もうとする。

「だめです、グランツ様……!」

 咄嗟にシエルが叫ばなければ、グランツはイルシャを攻撃していた。