「これも理解してやっているわけではないのです。水があればいいと思うから出せているだけで。……いえ。ミュンが望んでいるから、というほうが近いかもしれません」

「理屈で魔法を使っているわけではないのだな。貴女の生まれ育ちを考えれば無理もないか……。いつか師をつければ、ほかにも様々な魔法を扱えるようになるのだろう」

「その時はグランツ様に見ていただきたいです」

「……ありがとう」

 微笑みながら言ったシエルだが、グランツは彼女からそっと視線をそらした。彼の赤らんだ頬にシエルが気づかなかったのは、果たしてよかったのかどうか。

 と、その時。ぐるるとイルシャが喉を鳴らした。