しかしグランツにもノイフェルト公爵として、そしてカセル騎士団の団長としての立場がある。大々的に彼女を出迎えれば、今よりも『魔女に魅入られた』と言われかねず、きな臭い動きをする貴族たちや、他国が攻め込む隙になりかねない。そうなった時に一番傷つくのはシエルだ。

 自身の恋愛を成就させるよりも、彼女が本来与えられるべき日常の喜びや幸せを取り戻したいというのが、今のグランツの思いだった。

 たとえ本物の聖女だと周知されなくても、魔女ではないとわかってもらえさえすれば十分だが、その方法が考えつかない。

(戦場なら大将の首級をあげれば片がつくのにな)