望まれたら応えてしまう受動的な性質は、シエルの話を聞く限り、環境によって作られたものだろう。

(今は俺が抑えられても、いつか別の人間が彼女を殺すよう命じられるかもしれない。そうなる前に手を打たねばならないが……どうしたらいいものか)

 グランツがどんなに声を上げても、本人があのままではなにも変わらない。かといって、彼女に変わるよう伝えるつもりはなかった。

 もうシエルは十分傷ついた。グランツはこれ以上、彼女につらい思いをさせたくないと思っている。

 本当は今すぐにでもシエルを屋敷に迎え入れ、粗末な生活から解放してやりたかった。