もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 執事が言うのは、国境に位置するケベク砦のことだ。

「己の責務を忘れているわけじゃない。……心配をかけてすまないな」

 まだ話し足りない様子の執事をかわして部屋に入り、ようやくひとりになる。

(セニルースの本当の聖女はシエルだろう)

 扉に背をもたれさせ、天井を見上げたグランツは、シエルの境遇を振り返って顔をしかめた。

(強い魔力を持ったシエルを、周囲の人間がずっと利用し続けてきたんだ。両親も王女も、当たり前のように彼女の自由を奪って。だから彼女は、他人を警戒する割に疑うことを知らない……)