もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

 グランツは自室にたどり着くと、足を止めて執事を振り返った。その口もとには困ったような笑みが浮かんでいる。

「今日、殿下にもまた言われてな。俺はそんなにおかしくなったように見えるか?」

「以前のグランツ様ならば、ありえないことですから。女性の顔と名前を覚えるよりも、馬を見分けるほうが簡単だと言い放った時はどうしようかと……」

「いつの話をしているんだ。今はさすがにわかるぞ」

 それこそ、グランツがラークと同じような年齢の頃の話である。

こうしてちょくちょく未熟だった過去を持ち出されるせいで、グランツはどんな敵よりも〝じいや〟を強敵とみなしていた。