もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです

「今日もまた、ミディイルと魔女のもとへ向かったのですね」

 高齢の執事はグランツが幼い頃から、ノイフェルト邸で働いている。それもあって、この屋敷で唯一、主人のグランツに遠慮をしない。

「ミディイルの蹄に煤の森の土が残っておりました。あれほど、魔女のもとに通うのはおやめくださいと言いましたのに」

「彼女は魔女と呼ばれているだけで、実際は違う」

 自室へ向かうグランツの声は硬いが、そこに怒りや苛立ちはない。

 魔女とグランツの逢瀬を知る人々の忠告は、すべて彼を心配してのものだとわかっていたからだ。